netpoyo広報ブログ

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女の子ウェブの歴史〜もしグーグルがインターネットになかったら #bunfree

 

パックス・ネトポヨーナ。相変わらず新御徒町に監禁中のため超会議にも行けないねとぽよちゃんです。 

『ねとぽよ vol.2』 紹介エントリ第2弾は、女の子ウェブの歴史特集です。素材サイトとか、懐かしいぽよ……。 

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【執筆者:klov】

これまでウェブの歴史は、技術・文化・ビジネスその他さまざまな切り口で、幾度となく語られてきました。5月6日(日)の文学フリマで、新たなウェブの歴史が誕生します。「女の子ウェブの歴史」です。 

Googleのプラットフォーム上にブログを始めとするコンテンツ群が誕生し、さらにソーシャルメディアが発達してリアルタイムなウェブの時代を迎えた……従来語られてきたウェブの歴史を要約すれば、それはGoogle(検索)とtwitter/Facebook(ソーシャルメディア)といったプラットフォームの歴史でもあります。これは欧米だけでなく、海外のWebサービスを輸入してローカライズする「タイムマシン」が使われてきた日本でも同様です。 

ところが、日本の女の子たちはこうした「表」の歴史とは全く違う形でウェブを使いこなし、発展させてきました。1998年にラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンがガレージでGoogleのサイトを立ち上げた翌年、i-modeが誕生します。歴史の分岐はすでにここから始まっていました。パケット定額制を経て華開いたガラケーウェブの文化は、PCウェブで培われた文化・ノウハウを吸収して、プーペガールやピグなど独自のウェブサービスを生み出すに至ります。 

本編をちょっとご紹介しましょう。この特集は2つのパートに分かれています。

 

1.女の子のWebサービス 進化の歴史

最初のパートでは、人々の記憶に眠ったままになっていた女の子ウェブの歴史を、某ネットベンチャーでCFOを務めていた「猫」*1が語ります。

第1部〜女の子向けネットの特徴

第2部〜ガラパゴスケータイの文化

第3部〜グーグルなき世界

第4部〜女の子って何?

第1部ではピグを通じて、女の子の向けWebサービスがどのような特徴を持ち、どんな要素を歴史の中で引き継ぎながら進化していったのかを追います。また女の子のインターネット体験から切っても切り離せないガラケーの世界がどう進化していったかを、第2部・第3部で解き明かします。最後に、女の子のインターネットと「女子文化」の関わりについて紐説いていきます。

 

特に第3部では、Googleのないウェブの世界=ページランクの働かない世界で、どのようにコンテンツが結びつき、「発見」されていったのかが語られます。 

……確かに、検索エンジンから人は来ないし、ランキングが大きな力を持ってはいるんだけど、代わりに女の子たちは相互リンクや同盟やリングを使うんだよね。まあ、使ってたんだよねという方が正しいかも知れないけど。あれを使って、お互いの読者を紹介しあって、ランキングとは別のところで読み手を増やしていくの。 あれって結構重要で、例えば大手のサイトから相互リンクを貼られていると、そのサイトの評価は高くなるし、それも多く貼られている方が信頼できるし……」

 

「それって、ページランクじゃん!」

 

「まあ、ちょっと似てるかも。ラリー・ページは相互リンク厨だったのかな(笑)」

 

「今から見るとページランクなんて、どこからこんなアイディアを思いついたんだという気になってしまうが、存外こういうシンプルなところに発想の種はあったのかも知れん。日本の女の子たちは、実はページランクを思いつく一歩手前まで来ていたのかもしれんな(笑)」

 このような文化は、やがて「表」のウェブが作り上げたものとは別の生態系を生み出します。  

「……例えば、表の世界のWebサービスでは、GoogleFacebookなど、新しいプラットフォームが出来ると、それに乗っかる形で新しいサービスが生まれていく。そして、新しいプラットフォームの上では、新しい文化が産まれてくるわけじゃ。

 しかし、日本の女の子ウェブは、必ずしもそうではない。彼女たちはずっと同じものだけを求め続けておる。端的に言ってしまえば、コミュニケーションと着せ替えじゃな。サービスは確かに淘汰されていく。ピグのような華やかな事例を見ていると勘違いしがちじゃが、ハッキリ言って女の子ウェブは儲からん。女の子ウェブの周辺には死屍累々が転がっておる。だが、彼女たちが求める文化だけは、常に温存され続けて、変わることがない」 

 

「まあ、ニコニコ生放送が、女子高生がコメントとチャットする場所になったのなんて、その典型よね。どんなサービスだって、彼女たちは自分たちが使いたいように使い続けていくわけよね」 

 

Googleが存在しない世界では、“アーキテクチャの生態系”は生まれなかった。そして、アーキテクチャよりも文化の方が圧倒的に強い場所だった。これが表のウェブに対する、女の子ウェブの最も大きな違いじゃろうな」 

 

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 そしてこうしたウェブの分析は、最終的に女の子たちの文化が持つ「かわいい」の正体を巡る議論に行きつきます。「かわいい」の源泉は「かわいい」。こうした独特のループ構造にも迫ります。 

 「問題は、そういうカワイイの再帰的ループを働かせるブートストラップが駆動するのは、どんな文化なのかということじゃ。別になんでもかんでもカワイイと呼ばれるわけでもないからな」

  

「最近なら、四方田犬彦という人の分析が面白いかもなあ。彼は、自分の講義で女子大生にアンケートを採って、 “あるものが「かわいい」と呼ばれるときには、そのどこかにグロテスクがこっそりと隠し味として用いられている“と言ってるの。ちなみに、彼はカワイイとグロテスクを補完し合う感覚として捉えていて、むしろ「美しい」という感覚の方を、カワイイに対比させてる」

 

「俺は、それは分かるよ。クリノッペもなめこも、正直なところ気持ち悪いと思う方が普通だと思うし。クリノッペなんて、最初グレイか何かかと思ったもん」

 

「私もクリノッペは、確かに最初はかわいく見えなかったなあ。でもさ、カビが生えてるクリノッペをお風呂に入れてあげたり、ダンス教室に通わせたクリノッペが嬉しそうに踊ってるのを見たりすると、だんだんかわいく見えてくるんだよ」

 

「四方田さんは、先の分析で「ヴァルネラビリティ」——日本語で言うところの「弱さ・もろさ」を重視しているのね。単に不気味なだけではダメで、「私がいないとダメだな」と思わせるのが大事なのかもね。そうやって、不気味なものに対する警戒心が解けたときに、カワイイという感覚が発動しはじめるという感じかしら——私の実感では」

 

「どうやらカワイイという感覚を掘り下げてみると、自分だけがわかる、自分だけのもの、という気持ちと切り離せないところがあるようじゃな。ガラケーのデコにもそういうところはあるんじゃないかな。どうも固有性の感覚と深く結びついている気がするのう」

 

2.女の子のウェブをフィールドワーク 

1つ目のパートが女の子のインターネットを俯瞰してまとめた「分析」だとすれば、2つ目は草の根的な「フィールドワーク」と言えるでしょう。ガラケー女子から腐女子まで、違う生態系で生きてきた4人の女の子が実際にこれまでの体験をもとに、「素材系サイト」「auの黄金時代」「Googleのない世界と相互リンク」などについて語ります。  

このパートは「デジタルネイティブじゃない1989年生まれのわたしの話 - インターネットもぐもぐ」などでホッテントリを席巻した id:haruna26 が担当します。詳細は「インターネットもぐもぐ」のエントリからご覧ください。  

Googleおよびソーシャル以前のインターネット、そしてそこで細々と生きていた女の子たちの話、をねとぽよに書きました - インターネットもぐもぐ

  

GoogleFacebookAppleの話題に飽き飽きしたあなたも、「素材サイトwww懐かしいwww」と画面の向こうで草を生やしているあなたも、みなさん5月6日の文学フリマでお会いしましょう。そんじゃーね!

 

*1:上場時に「獣が取締役はまずい」との会計士の指導で、会社を追われたらしい